過敏性腸症候群

DISEASE 疾患 過敏性腸症候群

過敏性腸症候群について

日本人の約1~2割にみられるといわれる非常にポピュラーな病気です。
医学的には、こうした症状が「1年のうち12週間以上つづく場合」と決まっていますが、通勤や外出に差し障るようになれば、過敏性腸症候群の可能性が高いでしょう。
通勤途中、電車を降りてトイレに駆け込むことがよくあるとか、おなかの調子が心配で、外出する気になれないという人は、この病気を疑ってください。過敏性腸症候群は、「検査をしても異常がない」ことが特徴ですが、おもな原因はストレスです。ストレスによって自律神経が乱れ、腹痛や下痢、便秘の症状を引き起こすのですが、一度症状がでるようになると、「またおなかが痛くなったらどうしよう?」という不安がストレスとなり、新たな症状を引き起こしてしまいます。

過敏性腸症候群について

過敏性腸症候群の症状

過敏性腸症候群は、症状の出方に応じて下痢型、便秘型、混合型、分類不能型の4種類に分けられます。

下痢型

緊張などが原因で腹痛が生じて下痢が起こる、通勤中の電車内で便意を催すなどの症状が起こる傾向にあり、男性が発症しやすいとされています。

便秘型

ストレスによって便秘が悪化し、排便してもウサギの糞のような小さくてコロコロした便が少ししか出ないといった症状が現れる傾向にあり、女性が発症しやすいとされています。

混合型

下痢が長引いた後に慢性的な便秘が起こる種類です。

分類不能型

便秘や下痢などの症状は起こりませんが、常に膨満感がある、お腹の不快感が慢性的に起こるといった症状が特徴的です。

こうした症状は、緊張やストレス、食事などによって起こりやすくなるため、食事方法や食事内容などに影響されて症状が起こったり、午前中(特に通勤通学の時間)に症状が悪化して午後になると軽くなったり、休日や就寝中は症状が起こらないといった傾向にあります。

過敏性腸症候群の診断、検査

症状のみでは過敏性腸症候群の診断は難しいです。同様の症状が起こる別の器質的異常や内分泌性、全身性の疾患の有無をチェックするために色々な検査を実施し、別の疾患との除外診断を実施します。同様の症状が起こる疾患としては、潰瘍性大腸炎、クローン病、感染性腸炎、大腸がんなどの腸の疾患、甲状腺などの内分泌異常、糖尿病など全身性疾患などが挙げられます。
こうした器質的、内分泌性、全身性の異常が発見されない場合に、患者様のその他の状態なども考慮して、国際的な消化器病学会によって制定されたRomeⅣ規準というガイドラインに則り、過敏性腸症候群の診断を行います。

Rome IV基準とは

2016年に新たに発表された過敏性腸症候群 (IBS) の国際的な診断基準です。
最近3か月の間で、月に4日以上の腹痛があり、以下の項目に2つ以上該当するかどうかを調べます。

  • 排便と症状が関連する
  • 排便頻度の変化を伴う
  • 便の形状変化を伴う

診察

問診にて詳しい症状、症状の強さ、起こっている期間、服薬歴、既往歴などを確認します。

腹部症状が激しい場合は、腹部の状態をチェックするために聴診や触診を実施します。

診察

検査

過敏性腸症候群では、症状を引き起こす別の疾患が起こっていないことが重要ですので、色々な検査を行い、別の疾患との除外診断をします。

血液検査によって、炎症の程度や状態、貧血の有無、感染の有無、消化器の状態などを確認します。また、便検査で細菌感染が起こっていないかを確認します。
さらに、大腸カメラ検査では、大腸粘膜の状態を詳しくチェックし、ポリープやがん、炎症が原因となる潰瘍やびらんが生じていないか、別の疾患でよく見られる病変が生じていないかなどをチェックします。
疑わしい病変があれば、組織採取を行い病理検査で確定診断を実施します。
当院では、内視鏡検査の専門医の資格を有する熟練の医師が、細心の注意を払って負担を最小限に抑えた大腸カメラ検査を実施します。

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大腸カメラ検査

過敏性腸症候群の治療方法

過敏性腸症候群は、放っておくと命を落とすようなリスクは伴いませんが、症状によってQOL(日常生活の質)が著しく下がります。したがって、なるべく発症する前の日常生活に近づけるように、患者様一人ひとりの生活習慣に応じた治療をすることが重要です。ストレスや生活習慣が発症に影響するため、治療では生活習慣の見直しと薬物療法の2つをメインに行います。しかし、過敏性腸症候群は一度症状が落ち着いても、再発するリスクが高く、治療は時間を要するため、根気強く治療に取り組むことが必要です。

生活習慣の見直し(運動療法、食事療法など)

適度な運動を習慣化することで、失調した自律神経が回復し、腸が正常に機能するようになります。無理のない範囲で習慣化できるようにしましょう。
また、暴飲暴食、高たんぱく・高脂質な食事、不規則な時間の食事、就寝間際の食事などを控え、食事の栄養バランスを見直して規則正しい時間に食事をすることをお勧めします。特にお酒の飲み過ぎ、食べ過ぎ、刺激物の過剰摂取によって症状が悪化するため、注意が必要です。
最近注目されているFODMAP(フォドマップ:オリゴ糖、二糖類、単糖類、ポリオール)は、小腸で吸収されにくく、そのまま大腸に到達することで過剰なガスが発生し、腹部の不快な症状を引き起こします。IBSで悩まれている方は低FODMAP食をお勧めします。ただ、高FODMAP食にも腸に良い食品がたくさん含まれていますので、低FODMAP食は、症状の強い時に短期間(数週間)から開始して、症状が落ち着いたら元の食習慣に戻すという食事法をお勧めします。

表:FODMAPを含む食品(一部)

低FODMAP 高FODMAP
野菜 人参、なす、ピーマン 玉葱、ごぼう、にんにく
穀物類 白米、玄米 パン、パスタ、シリアル
乳製品 バター、卵 牛乳、ヨーグルト
その他 コーヒー、チョコレート 納豆、ドーナツ、ジュース

さらに、緊張、精神的なストレス、不安などの蓄積、過労、不規則な睡眠や睡眠不足などによっても症状は重くなります。ご自身に合ったやり方で不安やストレスを解消できるようにして、適度な休憩や入浴で疲労を解消し、早寝早起きなどを意識して日常生活を送ることを推奨します。

薬物療法

生活習慣の見直しだけでは効果が不十分な場合や、重度の症状が起こっている場合は、薬物療法を実施します。 下痢型、便秘型、混合型、分類不能型の種類に応じて最適なお薬は様々ですが、便の硬さをコントロールするお薬、腸管の運動機能を向上させるお薬、腸内フローラをコントロールするお薬などを主に処方します。
また、患者様の病状に応じて、西洋医学のお薬の他にも、漢方薬を使用する場合もあります。さらに、精神的・心理的原因によって発症していると考えられる場合は、抗不安薬や抗うつ薬を短期的に使用する場合もあります。
過敏性腸症候群は、消化管に炎症などの明確な病変が生じないため、「このタイミングで治療は終了」といった診断は難しく、症状の変化を確認しながら処方内容を見直していきます。

薬物療法

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